「私」と「誰か」との見えない繋がり
「人はみんな誰かに影響を与えている」
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読書記録を中心に日々の学びを投稿しています。
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今日の学びは、私のブログも画面越しのあなたに支えられているということ、です。
「ナミヤ雑貨店の奇蹟/東野圭吾」
この本を読み終えたとき、胸の奥にじんわりと温かいものが広がった。この物語は、古びた雑貨店に迷い込んだ3人の少年たちが、過去から届く悩み相談の手紙に返事を書くうちに、自分の過去や生き方と向き合っていく、不思議で優しい奇蹟の物語である。時間と空間を超えて人と人がつながるというファンタジックな設定でありながら、物語の根底には、「見えない誰かのために、心を尽くすこと」の尊さが静かに描かれていたように思う。
少年たちは、もともと世の中に対して冷めたまなざしを持っていた。心から信じられる大人も、未来の希望も見いだせず、無関心に生きていたように思う。だが、ひとつの手紙に向き合い、「自分がこの人だったらどうするか」と本気で考えるうちに、彼らの中に少しずつ変化が起こる。名前も顔も知らない相談者に対して、最初は戸惑いながらも、やがて真剣に返事を書くようになる。その過程は、まるで彼ら自身の心の扉が、静
かに開かれていくようだった。
私は少年たちの変化に、自分自身の仕事や日常を重ねていた。自分の仕事に関わる全ての人たちの顔が見えるわけではない。デスクワーク中心で、メールひとつ送るのも、相手がどんな表情で読んでくれるのか、どんな気持ちで受け取るのかは、いつだって想像することしかできない。それでも、この言葉の方がわかりやすいかな、この言葉の方が勘違いが生まれないかな、と考えて届けるようにしていると、確かに「見えない相手の安心を支えている」と感じる瞬間がある。少年たちが、見知らぬ相談者の人生に思い
を巡らせながら手紙を書く姿は、私が日々、顔の見えない誰かのために手を動かす姿と少し重なった気がした。
今は SNS も普及し、誰もが簡単に言葉を発信できる。でも、便利さの裏側で、言葉が軽く扱われてしまう場面も増えた。匿名だからこそ無責任な言葉が飛び交い、顔が見えないからこそ、相手への思いやりを忘れてしまう。そんな現代だからこそ、ナミヤ雑貨店の物語は、「あなたは、顔が見えない相手のことをどれだけ考えられているか」と問いかけてきているようにも感じた。
読み終えた後、ふと身の回りを見渡してみた。日々使っている家具や文具、お店の内装、それら一つひとつが、どこかの誰かが「これを使う人のために」と心を込めて作ったものなんだなと気付いた。私はその人たちの顔も名前も知らない。でも確かにその想いは受け取っている。私たちは、見えない誰かと日常の中で静かに繋がっているのだと思った。
本書の中の奇蹟とは、突然起こる魔法のような出来事ではなく、「人が人を想う力」がゆっくりとつながり、形になっていく過程なのかもしれない。顔の見えない誰かに、心を尽くして動くこと。その小さな積み重ねが、誰かの未来を変えていく。私もまた、そんな「奇蹟の担い手」でありたいと心から思った。
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